Tardigrades
- Lei Li李磊 et al.
この論文は、世界で一番タフな生物、クマムシの研究。クマムシは、約0.5mmの小さなサイズながら、深海、南極、乾燥地など多くのストレス環境下でも生き残る力を持っている。この論文では、その中でもクマムシの持つ、高い放射線耐性に着目している。筆者らは、放射線照射後のクマムシのRNA,タンパク質発現スクリーニングを行い、放射線耐性に関わる遺伝子を同定した。面白いことに、放射線照射で発現が変化した遺伝子群を、機能ではなく、他の生物にも似た遺伝子があるのかという遺伝子の保存性によって、クマムシ固有の遺伝子群、他の生物にもある遺伝子群、それと水平伝播で他の生物からクマムシに届けられた遺伝子群に分類し、それぞれで放射線照射による発現量変化が最も大きい遺伝子をピックアップして、その機能解析を行っている。DNA修復の経路を活性化させることで、放射線のダメージを修復させていたり、DNAダメージに寄与するROS(活性酸素)の阻害を行っていたり。クマムシの放射線耐性の高さは、数多くのダメージ修復機能があるからなのか、それとももっと本質的な理由があるのか... まだまだ調べる余地があり、論文を読めば読むほど、クマムシすごいなってなっていった。生物学を学んでいる人は、進化系統学の知識があるので、私たちが日頃ヒトやハエで調べている現象がどのルーツから進化してきたのか、と広い視野で物事を見ている気がする。もう少しその辺りの勉強をしてみたいなといつも思う。このラボで初めてやった論文紹介は、予定より長くなってしまったのが反省点だけど、でも皆さん面白いと思ってくれたみたいで何よりだった。
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