Lei Li李磊 et al. , Multi-omics landscape and molecular basis of radiation tolerance in a tardigrade. Science 386 , eadl0799 (2024). DOI: 10.1126/science.adl0799 昨日、ラボ内発表でJournal Presentationをした。ここのラボミーティングでは、各回、1人が自分のプロジェクトの進捗発表、もう1人が他のラボから投稿された論文紹介を行う。 論文紹介の目的は、他のラボの研究を知ることで知識を向上させ、自分の研究に活かすこと。今日は私が論文紹介の当番だった。ミネソタのラボでは論文紹介を行っていなかったので、京都以来2年ぶり。今回は、去年10月に投稿されたScienceの論文を紹介してみた。これまで他の人の発表を聞いていて、皆さん、それぞれの研究テーマに密接に関わる論文を選んでいる印象だった。私もそうしようかと悩んだ末に、やっぱり強く関連していなくともコンセプトが面白い論文を選んでみる方がやる気出るし、まだ自分のプロジェクトが確立していない今ならありかなと思い、チョイスしてみた。 この論文は、世界で一番タフな生物、クマムシの研究。クマムシは、約0.5mmの小さなサイズながら、深海、南極、乾燥地など多くのストレス環境下でも生き残る力を持っている。この論文では、その中でもクマムシの持つ、高い放射線耐性に着目している。筆者らは、放射線照射後のクマムシのRNA,タンパク質発現スクリーニングを行い、放射線耐性に関わる遺伝子を同定した。面白いことに、放射線照射で発現が変化した遺伝子群を、機能ではなく、他の生物にも似た遺伝子があるのかという遺伝子の保存性によって、クマムシ固有の遺伝子群、他の生物にもある遺伝子群、それと水平伝播で他の生物からクマムシに届けられた遺伝子群に分類し、それぞれで放射線照射による発現量変化が最も大きい遺伝子をピックアップして、その機能解析を行っている。DNA修復の経路を活性化させることで、放射線のダメージを修復させていたり、DNAダメージに寄与するROS(活性酸素)の阻害を行っていたり。クマムシの放射線耐性の高さは、数多くのダメージ修復機能があるからなのか、それとももっと本質的...